三つ続けて白かったら?

中が見えない袋に、石が六つ入っています。一つずつ取り出して机に置くと、最初の三つは、どれも白でした。「きっと、残りも白いね」と言いたくなるでしょうか。
ここで確かめたのは、取り出した三つの色です。袋に残った三つは、まだ見ていません。「見た三つは白い」と「六つ全部が白い」は、同じ広さの話でしょうか。
これは本サイトで作った、考えるための場面です。六つ以外の石は入れず、取り出した石を袋へ戻さず、途中で色も変わらないことにします。挿絵の石や袋は、実際の調査記録ではありません。
同じ三つから、二通りの続きがある
下の図では、袋の中身について二つの場合を考えます。Aでは、残りの三つも白。Bでは、残りに白が二つ、青が一つあります。どちらも、最初に見た三つは白いままです。
つまり、白い石を三つ見たという情報だけなら、AとBの両方が考えられます。Bがあり得るのに、「必ず六つとも白い」とまでは決められないのですね。図の下の段は、まだ見ていない部分の二通りの例です。
観察したことから、まだ見ていないものや、もっと広い範囲へ考えを伸ばすことを、哲学では「帰納(きのう)」と呼びます。三つが白かったので残りも白そうだ、と考えるのが今回の例です。
哲学者ヒュームは『人間知性研究』で、経験したことを、ほかの物やこれからの時へ広げる根拠を問い直しました。この石の話は、ヒュームの原文の例ではなく、その問いへの入口として本サイトで作った模型です。
見た三つは同じ。残りは?
- A:六つとも白い場合
見た三つは白、残り三つも白。合計は白六つ。
- B:青が一つある場合
見た三つは白、残りは白二つと青一つ。合計は白五つと青一つ。
予想することは、やめたほうがいい?

「必ず」と言えないなら、経験から考えることは役に立たないのでしょうか。そう急いで決める必要はありません。昨日までに調べたことを手がかりに、次に何を調べるか考えることもできます。
大切なのは、観察と予想を同じ言い方にしないことです。「三つは白かった。残りも白いかもしれない。でも、まだ見ていない」と言えば、手がかりと、わからないところの両方を伝えられます。
また、同じ一つの石を三回見ても、別々の石を三つ見たことにはなりません。何回見たかだけでなく、何をどこまで見たかも確かめたいですね。今回の袋では、取り出した石を戻さない条件が効いています。
二枚目の挿絵は、マスコットが青い石を見つけた架空の場面です。もし同じ六つの中から青が一つ出てきたら、「六つ全部が白い」という予想はどうなるでしょう。
一つ違うと、「全部」は変わる
「六つ全部が白い」は、六つのうちどれにも、白でない石はないという主張です。条件どおり同じ六つの中で青い石を一つ確かめたら、この主張は成り立ちません。下の図で、その関係をたどりましょう。
ここでは、青い石は「全部白い」という主張に合わない例です。このような例を「反例(はんれい)」と呼びます。全部について言ったことを見直す、はっきりした手がかりになります。
では、六つ全部を取り出して、どれも白いと確認できたら? 石の入れ替えや色の変化がない今回の条件なら、「この六つは全部白い」と言えます。それでも、世界中の石が全部白いとわかったわけではありません。
調べる範囲をはっきりさせると、何を確かめ終わり、どこから先が予想なのかを分けやすくなります。反例が見つかったら、見た事実を消すのでなく、自分の主張のほうを考え直せます。
「全部」に合わない一つの例
- 主張する範囲を決める
「この六つは全部白い」と考えた。
- 残りも観察する合わない例を確かめる
その六つの中から、青い石を一つ見つけた。
- 一つ違えば、全部ではない主張を見直す
この六つについて「全部白い」とは言えなかった。
六つの紙で、見える範囲を変えよう
小さな紙を六枚用意し、表に石の形を描きます。五枚は中を白く残し、一枚は青くぬって「青」と書きます。白い方には「白」と書けば、色だけに頼らず区別できます。
三枚の白い紙を表向きにし、残りの白二枚と青一枚は裏向きにします。作った人は中身を知っていますが、ここでは「表の三枚だけ見た人には何がわかる?」と考えてみましょう。
予想と、見えている事実を別々に紙へ書きます。その後、裏向きの三枚もめくり、「全部白い」という主張に合わないものを指してみます。実物の石や、小さな粒を集める必要はありません。
この活動は、当てるゲームではありません。見える範囲を決めて、そこからどこまで言えるかを考える練習です。「全部」「いつも」と言いたくなった時、何を確かめ、どこへ考えを伸ばしたのか、立ち止まってみませんか。
くらべると、何が見える?
次の表は、この記事のために作った例です。
| 注目すること | たとえば | 考える手がかり |
|---|---|---|
| 確かめたこと | 取り出した別々の三つは白い | 見た三つについての話。残り三つの色はまだ見ていない。 |
| 広げた予想 | 六つ全部が白いかもしれない | 同じ観察から、青を含む内訳も考えられる。必ずとは言えない。 |
| 主張に合わない例 | 同じ六つの中に青い石が一つあった | 「この六つは全部白い」という主張を見直す理由になる。 |
ことばの小さな辞典
- 観察(かんさつ)
- 物の様子などを、実際に注意して確かめること。
- 帰納(きのう)
- 見た例などを手がかりに、まだ見ていないものや広い範囲について考えること。
- 反例(はんれい)
- 「全部がこうだ」という主張などに、合わない例。
紙とえんぴつで、やってみよう
答えを送信する必要はありません。自分のノートに書いて、おうちの人と話してみてね。
- 紙六枚に石を描き、白五枚と、青と書いた一枚を作ろう。
- 白三枚だけ表にして、そこだけを見た人の観察と予想を分けて書こう。
- 残りもめくり、「全部白い」に合わない例を見つけよう。

じぶんの考えを見つけよう
考えてみよう!
白い石を三つ見た人は、残りに青がある場合を、もう否定できる?
考えるヒントを見る
最初の三つが同じでも、残りが違う二つの場合を作れるか考えよう。予想したことと、実際に見た範囲を分けてみて。
参考資料・さらに読む
おうちの方へ:お話のもとになった考え方を調べるための資料です(英語の資料を含みます)。身近な例や「考えてみよう」は、このサイトで作りました。
観察から未観察や一般的な主張へ進む帰納の説明と、ヒュームの問いの位置づけはSEPの冒頭・第1節を参照しました。ヒューム原文では第4節第2部の経験から他の対象・未来へ拡張する問い、第5節第1部の習慣と経験の役割を確認しました。日本語は独自の要約で、原文引用ではありません。六つの石、二通りの内訳、反例の図、挿絵、紙の活動は本サイト独自の架空例です。六つをすべて確認した場合の結論は、この模型の条件と範囲についての説明です。
- Stanford Encyclopedia of Philosophy「The Problem of Induction」冒頭・第1節
- David Hume『An Enquiry Concerning Human Understanding』第4節第2部・第5節第1部(Project Gutenberg)
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