見つかったところから、始めてみる

「枝に引っかかった帽子を、ようやく見つけた。」こんな一文でお話が始まりました。よかったね、と思う人もいれば、どうして帽子がそこにあるの、と気になる人もいるでしょう。
実は、その少し前に風が帽子を飛ばし、持ち主は帽子を探していたのです。でも、読む人が最初に出会うのは、見つかった場面。出来事が起きた順番と、文章を読む順番が違っています。
挿絵では、マスコットが低い枝にかかった帽子を見つけています。帽子の話は本サイトで作った架空の例です。木に登ったり、高い所の物を取ったりする活動ではありません。
三つの出来事を、二通りに並べる
話の材料を三つに分けます。①風が帽子を飛ばす。②帽子を探す。③枝で帽子を見つける。このお話の中で、起きた順は①→②→③です。
Aの話し方は、起きた順に進みます。「風が帽子を飛ばした。帽子を探した。枝で帽子を見つけた。」探している間は、どこにあるのかな、と気になるかもしれません。
Bの話し方は、③から始めます。「枝で帽子を見つけた。少し前、風が帽子を飛ばした。帽子を探して、ここまで歩いたのだった。」読む順は③→①→②です。最初から見つかるとわかっていても、そこへ来るまでのことを知りたくなるかもしれません。
下の図で、数字と出来事を照らし合わせましょう。Bでも、帽子を見つけたあとに風が飛ばした、という出来事へ変えたわけではありません。過去の出来事を、後から伝えているのです。
起きた順と、読む順を分けよう
- A:① → ② → ③
飛ぶ → 探す → 見つける。起きた順に読む。
- B:③ → ① → ②
見つける → 少し前に飛んだ → 探した。前の出来事を後から読む。
前の時間へ戻る、回想

物語の今の場面から、前にあった出来事を描くことを「回想(かいそう)」、または「フラッシュバック」と呼びます。ここでは物語の表現の意味で使っています。
オレゴン州立大学の解説は、物語の現在の流れをいったん中断して、過去の場面を見せる表現としてフラッシュバックを説明しています。過去を知ることが、今の場面や人物の理解に関わる点にも注目しています。
帽子のBの例では、「少し前」が前の時間へ戻る手がかりです。見つかった帽子を先に見て、その後で、なぜ探していたかを知ります。ただ順番を混ぜるのでなく、何を後から伝えたいかを考える工夫なのですね。
二枚目の挿絵では、マスコットが話のカードを並べています。どのカードを最初に置くかを選ぶ、架空の場面です。
「今」は、どこの場面?
回想のある話で迷ったら、「今読んでいる場面は、いつ?」と聞いてみましょう。下の図は、帽子のBの例を読むための手がかりです。見つけた場面を基準に、「少し前」という言葉を探します。
次に、前の出来事を知って、何がわかったかを考えます。帽子の例なら、枝を見ていた理由や、ここまで探してきたことがわかります。読み終えてから①→②→③に並べ直すと、話の中で起きた順も確かめられます。
前の時間へ戻るすべての話が、必ず「少し前」と書くわけではありません。日付や季節、人物の年齢などが手がかりになることもあります。わからない部分は、わからないまま印を付け、先を読んで確かめてもよいのです。
順番を変えれば必ず面白くなる、とも決めません。起きた順のほうが伝わりやすい場合もあります。どんな疑問や気持ちを持ちながら読んでほしいかで、選ぶ理由は変わります。
前の時間へ戻ったら、三つを確かめる
- 基準の場面は?
枝で帽子を見つけた場面。ここを物語の「今」として読む。
- 前の時間への合図を探す時間の手がかりは?
「少し前」から、飛んだことや探したことへ戻る。
- 今の場面とつなげて考える何がわかった?
帽子が枝にあるまでの事情や、持ち主が探していた理由。
カードで、お話を作り直そう
紙に三つの出来事を一つずつ書き、①②③の番号を付けます。まず起きた順に並べて読み、次に③①②に並べ替えてみましょう。出来事の内容は変えず、読む順だけを変えます。
二つ目では「少し前」などのつなぎ言葉を足し、いつの場面かが伝わるようにします。聞き手に、何が気になったか、時間がわかりにくかった所はあるかを聞いてみましょう。全員が同じ感想になる必要はありません。
オープン大学の創作教材も、物語が出来事を時間の中に組み立てることに目を向けています。この活動では、自分の秘密やつらい体験を話す必要はありません。帽子のような架空の話で、同じ出来事を違う入口から伝える工夫を試せます。
くらべると、何が見える?
次の表は、この記事のために作った例です。
| 注目すること | たとえば | 考える手がかり |
|---|---|---|
| 起きた順 | ①飛ぶ→②探す→③見つける | 架空の話の中で、出来事が起きた順番。 |
| A:読む順 | ①→②→③ | 帽子が見つかるか、先を追って読める。 |
| B:読む順 | ③→①→② | 見つかった場面を先に読み、前の事情を後から知る。 |
ことばの小さな辞典
- 回想(かいそう)
- ここでは、今の場面より前の出来事を描く物語の表現。
- フラッシュバック
- 物語の表現では、過去の場面へ戻ること。
- 時系列(じけいれつ)
- 出来事を、時間の順に並べたもの。
紙とえんぴつで、やってみよう
答えを送信する必要はありません。自分のノートに書いて、おうちの人と話してみてね。
- 三つの出来事を書いた紙に①②③の番号を付けよう。
- ①②③と③①②に並べて読み、二つ目には時間のつなぎ言葉を足そう。
- 何が気になったか、いつの場面かわかったかを聞き、必要なら書き直そう。

じぶんの考えを見つけよう
考えてみよう!
①帽子が飛ぶ、②探す、③見つける。同じ三つの出来事を③から話すと、聞く人は何を知りたくなる? 前の時間に戻ったと伝えるには、どんな言葉を足す?
考えるヒントを見る
①②③と③①②の二通りを読み比べます。「少し前」を足す場所を考え、気になった所と時間の手がかりを分けて話しましょう。架空の話だけで試せます。
参考資料・さらに読む
おうちの方へ:お話のもとになった考え方を調べるための資料です(英語の資料を含みます)。身近な例や「考えてみよう」は、このサイトで作りました。
過去の場面へ戻る定義と人物・現在の理解に関わる説明はオレゴン州立大学の解説、物語による時間の組み立てはオープン大学の教材を参照しました。教材に登場する映画・小説の場面は再現していません。帽子の三つの出来事、二通りの文章、カードの活動、挿絵と図は本サイト独自の架空例です。
- Oregon State University:What is a Flashback?/Kristin Griffin(回想の定義と、今の場面の理解との関係)
- The Open University:Using memories to order narrative(物語と時間の組み立て)
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