比喩と読みの根拠

「心が雨」って、どういうこと?

心に本当の雨は降らないのに、気持ちが伝わる。たとえの力と、読みすぎを防ぐ手がかりを探します。

この記事で考えること:たとえのどこを重ねるかは、前後のことばが手がかり。似たところと限界の両方を見よう。

心の中に、雨雲が来た?

遠足のかごのそばでがっかりするマスコット。頭上の雨雲は気持ちを表す想像の絵で、本当の天気ではない。
遠足のかごのそばでがっかりするマスコット。頭上の雨雲は気持ちを表す想像の絵で、本当の天気ではない。

「楽しみにしていた遠足が中止になった。わたしの心は雨になった」。これは、このサイトが作った短い文章です。心の中から水が落ちてきた、という意味でしょうか?

たぶんそうではありませんね。雨から思いうかべる暗さや冷たさを借りて、がっかりした気持ちを表している、と読めそうです。挿絵の小さな雨雲は、心のようすを想像したもの。本当の天気を描いた記録ではありません。

ちがうものを重ねる、たとえの力

何かを別のものにたとえて伝える表現を、比喩(ひゆ)といいます。「心は雨」のように言うことも、「雨のような心」と言うこともあります。

たとえは、ふたつのものの全部を同じにしません。心が雨なら、傘をさせば必ず元気になるのでしょうか。そうとは限りません。雨の「どんなところ」を気持ちと重ねているかを選ぶ必要があります。

下の図では「重ねられそうなところ」と「同じにできないところ」を比べています。似ているところだけでなく、ちがうところも探してみよう。

心と雨、どこを重ねる?

  1. 雨から浮かぶ感じ

    暗さ、冷たさ、静けさ。

  2. 心のようすと重ねる

    がっかりして、気持ちが沈む。

  3. 全部は同じにしない

    雨の水や傘の働きが、そのまま心にあるわけではない。

遠足が中止になったお話での読み方です。

雨が、うれしいこともある

雨を受けて芽が育つのを、マスコットがほっとした顔で見ている。雨を喜びに重ねた想像の絵。
雨を受けて芽が育つのを、マスコットがほっとした顔で見ている。雨を喜びに重ねた想像の絵。

次の文章も本サイトの作り話です。「乾いた畑に雨が降った。待っていた知らせを聞き、わたしの心にも雨が降った」。今度の雨は、ほっとした気持ちや喜びと読めそうですね。

「雨=悲しみ」と固定して覚えると、ふたつ目のお話を読み落とします。同じことばでも、前後の文章によって、たとえが向かう先は変わります。挿絵の雨を受けた芽は、二つ目の読みを考えるための想像図です。

自由に読んで、理由を持ち寄る

「心の雨は、涙のようにも思える」と考えた人がいてもよいでしょう。そのときは「どのことばから、そう思った?」と聞いてみます。遠足の中止や、乾いた畑の場面は、それぞれの読みを支える手がかりです。

思いついたことなら何でも同じくらい確か、とはいえません。文章にない「主人公は昨日けんかした」を事実として足すと、根拠がなくなります。「こうだったら、と想像した」と区別することはできます。

次の図の順に、表現・前後の出来事・自分の読みを並べよう。友だちと結論がちがっても、どこを手がかりにしたかを比べられます。

読みの理由をたどろう

  1. 表現を見る

    「心は雨」と書かれている。

  2. 前後へ
    前後を見る

    遠足の中止? 乾いた畑と待っていた知らせ?

  3. 理由を添えて
    読みと理由を言う

    悲しみ、安心など。どのことばが手がかり?

二つのお話で、前後の出来事を入れ替えて比べよう。

説明しきれない感じも、大切に

たとえの面白さは、ひとことの説明に全部しまいこめないことにもあります。「悲しい」だけではない、冷たさや静かさを感じるかもしれません。比喩がどう働くかについても、研究者の間にいくつもの考え方があります。

まずは文章をゆっくり読んで、浮かんだ景色を言ってみましょう。それから「どこからそう読んだか」「全部は同じでないところ」を確かめる。想像を広げることと、ことばをよく見ることは、一緒にできるのです。

くらべると、何が見える?

次の表は、この記事のために作った例です。

比喩と読みの根拠をくらべる
注目することたとえば考える手がかり
中止になった遠足心は雨になったがっかりした気持ちと読める。「中止」が手がかり。
乾いた畑への雨心にも雨が降ったほっとした気持ちと読める。「待っていた知らせ」が手がかり。
同じにできないところ心に傘をさす?雨の特徴全部が気持ちに当てはまるわけではない。

ことばの小さな辞典

比喩
別のものにたとえるなどして、感じや考えを伝える表現。
根拠
その読みを考えた理由となる、文章のことばや出来事などの手がかり。

紙とえんぴつで、やってみよう

答えを送信する必要はありません。自分のノートに書いて、おうちの人と話してみてね。

  1. うれしい気持ちを、食べ物以外の何かにたとえよう。
  2. 似ているところと、同じではないところを書こう。
  3. 前後に一文ずつ足し、友だちにどんな気持ちと読めるか聞こう。

じぶんの考えを見つけよう

考えてみよう!

「心は雨」とだけ書かれた紙を拾いました。書いた人は悲しい、と決めてよい?

考えるヒントを見る

悲しみは候補のひとつ。でも雨を喜ぶ場面もありましたね。前後の文章や、その人が何を伝えたかったかを確かめる余地があります。本人の気持ちを勝手に決めないようにしよう。

参考資料・さらに読む

おうちの方へ:お話のもとになった考え方を調べるための資料です(英語の資料を含みます)。身近な例や「考えてみよう」は、このサイトで作りました。

比喩が異なる対象を重ね、解釈や言い換えにいくつもの考え方がある点はStanford Encyclopedia of Philosophyを参照しました。「心の雨」の二つの文章、挿絵、図、活動は本サイトが作ったもので、既存作品からの引用ではありません。

内容の誤りや出典についてのご指摘は、訂正窓口へお寄せください。