地図の目的と省略

地図には、世界の全部がのっている?

道をさがす地図と、木を調べる地図。同じ場所なのに、見えるものが変わるのはなぜ?

この記事で考えること:地図は、目的に合わせて情報を選んだもの。描かれていないことまで、なかったと決めない。

同じ公園に、2まいの地図

マスコットが、道とベンチを目立たせた地図と、木と池を目立たせた地図をくらべています。架空の公園の絵です。
マスコットが、道とベンチを目立たせた地図と、木と池を目立たせた地図をくらべています。架空の公園の絵です。

友だちに公園のベンチまで来てもらおう。あなたは入口からの道と、曲がり角にある池を描きました。小さな草や落ち葉は描いていません。それでも、友だちは道を見つけられそうです。

今度は、公園の木を調べる人に地図を渡します。道はわかっても、どこにどんな木があるかはわかりません。さっきは便利だった地図が、今度は物足りないのです。

下の絵では、マスコットが同じ公園を描いた2まいの絵地図をくらべています。左は道とベンチ、右は木と池が目立ちます。これは考えるために作った架空の公園です。

全部描けば、よい地図になる?

では、葉っぱを1まい残らず描けばよいのでしょうか。小さな紙に全部を詰めこむと、目当ての道が見えにくくなりそうです。地図は、現実をそっくり入れる箱ではありません。何を伝えたいかに合わせて、残すものと省くものを選びます。

省略(しょうりゃく)は、ある部分を描かずにおくことです。省くこと自体が、うそとは限りません。大切なのは、使う人が必要なことを確かめられるかどうか。下の図で、目的が変わると、残したい情報も変わることをくらべよう。

たとえば歩く人向けなら、階段があるかも大事です。「近い道」だけを示した地図では、車いすやベビーカーで通れるか、別に調べる必要があります。

目的が変わると、残す情報も変わる

  1. ベンチへ行きたい

    入口・道・曲がり角・ベンチを残す。

  2. 木を調べたい

    木の場所・種類を残す。

  3. 使う前に確認

    階段や通行止めなど、足りない情報を調べる。

同じ架空の公園を、別の目的で描く例です。どちらも、公園のすべては描きません。

丸い地球を、平らにすると

世界全体の地図には、もうひとつの工夫があります。地球の表面は丸く、紙や画面は平らです。丸い表面を平らに表す方法を、投影法(とうえいほう)といいます。

平らな世界地図で、面積、形、距離、方角のすべてを、地球の上と同じようには表せません。何を重視するかによって、得意なことがちがいます。面積をくらべるのに向くものもあれば、別の目的に向くものもあります。

そのため、紙の上で大きく見えた国が、実際にもその比率で大きいとは限りません。地球儀や、ちがう方法で作った地図ともくらべると、見え方のちがいに気づけます。「地図は役に立たない」という意味ではなく、使う目的を合わせることが大事なのです。

昔の地図は、何を伝えたかった?

マスコットが虫めがねで古そうな地図を見て、別の地図とくらべています。実在する史料ではない、説明用の挿絵です。
マスコットが虫めがねで古そうな地図を見て、別の地図とくらべています。実在する史料ではない、説明用の挿絵です。

古い地図を見るときも、「今とちがうから、まちがい」とすぐに決めないでみましょう。作った時代に知られていたこと、調べる道具、読む人の目的が、今とちがったのかもしれません。

川が細かく描かれ、道は少ない地図なら、船で移動する人に向けたのかな、と考えられます。でも、それはまず予想です。題名、説明、作った人、年代なども確かめてから判断します。

下の絵の古そうな地図は、このお話のための絵で、実在する史料ではありません。説明図では「見えたこと」と「考えたこと」を分けています。地図に家の印がないときも、そこに人がいなかったとまでは言えません。描く対象から外れていただけかもしれないからです。

見えたことから、予想を確かめる

  1. 観察

    川が細かく、道が少ない。

  2. 気づく
    予想

    船で移動する人のため?

  3. 別の資料で確かめる
    照合

    題名・年代・解説と比べる。

  4. 判断する
    言える範囲

    目的がわかることも、まだ不明なこともある。

架空の地図の読解例。描かれた内容だけで、作り手の目的は断定できません。

地図のすみも、読んでみよう

地図を開いたら、行き先だけでなく、題名や記号の説明、作られた日付も見てみよう。線が道なのか、境目なのか。いつの情報なのか。小さな手がかりが、読みまちがいを減らしてくれます。

自分で地図を描くなら、「だれが、何をするための地図?」と最初に決めてみてください。そこから必要なものを選べば、描かなかったものも説明できます。世界の全部がのっていなくても、使い道のはっきりした地図は、人を助けるのです。

くらべると、何が見える?

次の表は、この記事のために作った例です。

地図の目的と省略をくらべる
注目することたとえば考える手がかり
道案内の地図入口、曲がり角、ベンチを描く目的地へ着くための情報を残す。木の種類まではわからない。
木を調べる地図木の位置と種類を描く調査に役立つ情報を残す。歩ける道は別に確認する。
古い地図を読む川や家の印、題名を確かめる描かれたことと、そこから立てた予想を分ける。

ことばの小さな辞典

省略
伝えたいことをわかりやすくするため、ある部分を描かずにおくこと。
投影法
丸い地球の表面を、平らな地図に表す方法。
史料
昔のことを調べる手がかりになる記録や物。古い地図もそのひとつです。

紙とえんぴつで、やってみよう

答えを送信する必要はありません。自分のノートに書いて、おうちの人と話してみてね。

  1. 架空の公園に、入口・池・ベンチ・木を描こう。
  2. 道案内用と木の調査用の2まいに描き直そう。
  3. 友だち役になって使い、足りない情報をひとつ足そう。

じぶんの考えを見つけよう

考えてみよう!

同じ公園の地図を「ベンチへ行く人」と「木を調べる人」のために描くなら、それぞれ何を残す?

考えるヒントを見る

道や入口を残す地図と、木の場所や種類を残す地図を考えられます。両方に必要なものもあるでしょう。描かなかったものをひとつ選び、なぜ省いたかも説明してみよう。実際の家の住所などを書く必要はありません。

参考資料・さらに読む

おうちの方へ:お話のもとになった考え方を調べるための資料です(英語の資料を含みます)。身近な例や「考えてみよう」は、このサイトで作りました。

世界地図の投影に伴う限界はUSGS、作り手の目的を比較して古地図を読む方法は米国議会図書館の教材を参照しています。公園、地図の絵、会話、活動は本サイト独自の架空例です。

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