5人で、遊びを決めよう

5人の友だちで遊びます。走る遊びをしたい人が3人、座ってできる遊びをしたい人が2人。ひとり1票で選んだら、走る遊びに決まりました。
多いほうの意見で決める方法を、多数決(たすうけつ)といいます。意見が分かれても、その日の行動を決められるのがよいところです。
最初の挿絵は、遊びの案をくらべる架空の場面です。図では「3票」と「2票」をくらべます。数はわかっても、なぜその遊びを選んだかは、まだわかりません。
3票と2票から、何がわかる?
- 走る遊び:3票
この二つの案では、こちらを選んだ人が多い。
- 座る遊び:2票
好きだから選んだ人も、走れなくて選んだ人もいるかもしれない。
- 数に出ないこと
参加できるか、だれかの権利を傷つけないかは、別に確かめる。
同じ1票にも、ちがう事情がある
座る遊びを選んだひとりが、「今日は足をいためていて、走れないんだ」と話しました。もうひとりは「どちらもできるけれど、座るほうが好き」と言います。
同じ1票でも、ただの好みと、参加できるかどうかに関わる事情はちがいます。数えるだけでは、そのちがいを拾えません。
「3人が勝ったから、残りはがまんして」で終わらず、全員が参加できる遊びはないか考えられます。座ったままできるボール遊びなど、新しい案が見つかるかもしれません。ただし、本人がしたくない参加方法を勝手に決めないで、まず聞きましょう。
投票の前に、選ぶ案を変えられる

最初から二つの案だけに決めると、その二つの外にある工夫が見えにくくなります。「途中で交代する」「短い時間ずつ別の遊びをする」という案も出せます。
次の挿絵は、事情を聞いたあとで遊びの案を描き直している場面です。図の順番のように、何を決めるか、参加できない人がいないか、ほかの案があるかを確かめてから、決め方を選びます。
毎回全員が同じ気持ちになるのを待つと、いつまでも決められないこともあります。話を聞くことと、全員がすべてに賛成することは同じではありません。聞いた事情を案や条件に反映できたかが、大切です。
数える前後にも、考える仕事
- 事情を聞く
どんな点が困る? 言いたくない個人的事情は無理に聞かない。
- 理由を案に生かす案を広げる
参加しやすい別の遊びや、時間を分ける案を考える。
- 条件を確認する手順を選んで決める
権利を傷つける案は採用せず、納得できる決め方を相談する。
- 決まっても終わりではないあとで確かめる
始めてみて困った点がないか聞き、必要なら見直す。
多い意見でも、奪えないもの
では「ひとりだけ仲間に入れない」と、4人が賛成したら? 人数が多いという理由だけで、だれかの大切な権利を奪ってよいとは言えません。
子どもの権利条約は、子どもが差別されずに権利を保障されることや、自分に関わることについて意見を表し、その意見を年齢や成長に応じてきちんと考えてもらうことを定めています。意見を言う権利は、希望が必ずそのまま通ることとはちがいます。
国や地域の民主主義でも、投票だけでなく、言語や文化などの面で少数にあたる人々の権利を守る仕組みが重要になります。こうした少数者と、一回の投票で少なかった意見は、同じ意味ではありません。遊びの相談と国の政治は規模も責任も異なりますが、数を数えるほかに確かめたいことがある点は共通しています。
決めたあとにも、声を聞こう
相談して決めた遊びでも、始めてから困る人がいるかもしれません。「決まったから終わり」ではなく、途中で確かめる時間を作れます。
多数決は、みんなの行動を決める道具のひとつです。だれが意見を言えるか、選ぶ案はどう作るか、守るべき権利に反していないか。道具を使う前後にも、考える仕事があります。
今度みんなで決めるとき、賛成と反対を聞くだけでなく、「その案だと、どんな点が困る?」とも聞いてみよう。答えたくない事情は無理に話させず、相談できる大人や別の伝え方も用意するとよいですね。
くらべると、何が見える?
次の表は、この記事のために作った例です。
| 注目すること | たとえば | 考える手がかり |
|---|---|---|
| 票を数える | 走る遊び3票、座る遊び2票 | 行動を決めやすい。ただし、選んだ理由や困り方までは表れない。 |
| 事情を聞く | 足をいためていて走れない、とわかる | 参加できる条件を考えられる。言いにくい事情の説明を強要しない。 |
| 案を作り直す | 座ってできる別の遊びを出す | 二択の外の工夫が生まれる。本人の希望を聞いてから試す。 |
ことばの小さな辞典
- 多数決
- あらかじめ決めた手順で投票し、多いほうの意見を採用する決め方。
- 少数意見
- その場で賛成する人が少ない意見。少ないことだけでは、まちがいと決まりません。
- 権利
- だれもが大切にされるために守られるべきこと。人数の多さだけで取り上げてよいものではありません。
紙とえんぴつで、やってみよう
答えを送信する必要はありません。自分のノートに書いて、おうちの人と話してみてね。
- 架空の5人で、二つの遊びに投票した結果を書こう。
- 少ないほうを選んだ人に、好み以外の事情をひとつ考えよう。
- 新しい案をひとつ加え、決めたあとに困りごとを確かめる方法も書こう。

じぶんの考えを見つけよう
考えてみよう!
3人対2人で決まったあと、2人の声をどう生かせる?
考えるヒントを見る
結果をひっくり返すことだけが方法ではありません。案を変える、参加する条件を整える、途中で確かめる、なども考えよう。
参考資料・さらに読む
おうちの方へ:お話のもとになった考え方を調べるための資料です(英語の資料を含みます)。身近な例や「考えてみよう」は、このサイトで作りました。
子どもの意見表明と差別の禁止は子どもの権利条約第12条・第2条を確認しました。政治における少数者の権利の重要性は欧州評議会の資料を参照しています。5人の遊びと票数、話し合いの手順、挿絵は本サイト独自の架空例で、法律上の個別判断を示すものではありません。
- UNICEF:Convention on the Rights of the Child text(第2条・第12条)
- 欧州評議会:National minority standards(少数者の権利を守る基準)
内容の誤りや出典についてのご指摘は、訂正窓口へお寄せください。


