「青だ!」。当たったけれど

中が見えない封筒に、カードが一枚入っています。まだ見ていないのに「青だと思う」と言ってみました。開けると、本当に青いカード。予想は当たりました。
では、封筒を開ける前から、その色を「知っていた」と言えるのでしょうか。当たってうれしいことと、色を知るための手がかりを持っていたことは、同じでしょうか。
カードと封筒は、本サイトで作った架空の例です。挿絵のマスコットは、封筒から出てきた青いカードを見ています。答えを知った後だけでなく、答える前に何がわかっていたかを考えてみましょう。
同じ答えでも、たどり着き方が違う
Aさんは、中を見ず、色についての手がかりもなく「青」と答えました。Bさんは、封筒を開いてカードを見てから「青」と答えました。この例では、カードは青いまま、入れ替えもありません。
二人の答えは同じですが、答えにたどり着いた道は違います。下の図で、答えるまでの違いを見てください。Aさんの正解は偶然。Bさんには、実際のカードを見たという手がかりがあります。
哲学の認識論(にんしきろん)は、「何を知っていると言えるか」「どうすれば知れるか」などを考える学びです。Internet Encyclopedia of Philosophyの解説も、偶然当たった予想と、理由や証拠に支えられた考えを区別しています。
ただし、何でも自分の目で見ることだけが、知る方法ではありません。人から教わったり、筋道を立てて考えたりすることもあります。ここでは比べやすいように、カードを見る場面を使っています。
答えは同じ。でも、手がかりは?
- A:見ずに予想
色の手がかりがないまま「青」。開けてみると、偶然合っていた。
- B:見て答える
開いた封筒の青いカードを見てから「青」。この例では、実物を見た手がかりがある。
理由があるだけで、十分なのかな?

もう一つ、架空の場面を考えます。いつも時刻が合っていた時計を見たら、10時を示していました。見る人は、今日も動いていると思っています。ところが、その時計は前の夜の10時に止まっていたのです。
見る人が来たのは、ちょうど翌朝の10時でした。「今は10時だ」と思った答えは、本当の時刻と一致しています。時計を見るのは、ふだんなら時刻を調べるもっともな方法でもあります。
でも、その時計は止まっています。少し早く来ても、遅く来ても、同じ10時を示したまま。時刻が正しく変わったのを読み取ったのではなく、たまたま合う瞬間に見たのですね。
このような止まった時計の問いは、哲学の知識についての解説でも紹介されています。二枚目の挿絵は、マスコットが時計を確かめる架空の場面です。正確な時刻の条件は、次の図で確認しましょう。
答えと、手がかりのつながりを見る
下の図では、本当の時刻が10時から10時5分へ進みます。でも、止まった時計の表示は10時のままです。最初の一致だけを見ると、時計が正しく動いている場合との違いを見落とします。
知識を「本当にそうである」「本人もそう思っている」「そう思う理由がある」という三つで説明する考え方が、哲学では検討されてきました。Stanford Encyclopedia of Philosophyは、それでも偶然の正解が残る例を紹介しています。
つまり、「理由を一つ言えたら、もう何でも知っている」という決まりにはできないのです。その手がかりが、答えの正しさにどうつながっているかも、考える必要があります。
だからといって、「少しでも間違える可能性があれば、何も知らない」と決めるわけでもありません。知識の説明には議論があります。このお話では、正解したかだけでなく、どう確かめたのかも聞いてみるところから始めましょう。
合った瞬間と、5分後
- 本当の時刻
10時 → 10時5分。時間が進む。
- 止まった時計
10時 → 10時のまま。最初は合っていても、時計が時刻を伝え続けているわけではない。
紙の時計で、確かめ方を考えよう
紙に二枚のカードを作り、一枚に「本当の時刻 10時」、もう一枚に「止まった時計 10時」と書いて並べます。二つは同じ表示ですね。次に、一枚目だけを「本当の時刻 10時5分」に書き換えます。
二枚目は変えません。さっき答えが合っていたことだけで、この時計を次も時刻の手がかりにしてよいでしょうか。実物の時計を止めず、紙の模型で比べてみてください。
もし実際に時計が止まったかもしれないと気づいたら、動いていることを確かめ、別の時計などとも照らし合わせる方法が考えられます。ただし、「二つが同じなら必ず正しい」という完全な決まりでもありません。
知っている理由を聞くのは、相手を責めるためではありません。「当たったね」で終わらず、「何を手がかりにしたの?」と話せると、自分の答えも、もう少し丁寧に見直せます。
くらべると、何が見える?
次の表は、この記事のために作った例です。
| 注目すること | たとえば | 考える手がかり |
|---|---|---|
| 当てずっぽう | 中を見ずに青と答え、偶然当たった | 答えは合ったが、色を知る手がかりはなかった。 |
| 見て確かめる | 開いた封筒のカードを見て、青と答えた | この架空例では、見たカードと答えがつながっている。 |
| 止まった時計 | 10時を見て、ちょうど本当も10時だった | 時計を見る理由はあっても、今回は偶然の一致が残る。 |
ことばの小さな辞典
- 認識論(にんしきろん)
- 何を知っていると言えるか、どうすれば知れるかなどを考える哲学の分野。
- 根拠(こんきょ)
- そう考える支えになる理由や証拠。
- 偶然(ぐうぜん)
- ここでは、確かめる手がかりがうまく働いたからではなく、たまたま答えが合ったこと。
紙とえんぴつで、やってみよう
答えを送信する必要はありません。自分のノートに書いて、おうちの人と話してみてね。
- 紙に「本当の時刻 10時」「止まった時計 10時」と書いたカードを作ろう。
- 本当の時刻だけを10時5分に変え、もう一枚は10時のままにしよう。
- 最初の一致だけで何が言え、何がまだ確かめられないか話そう。

じぶんの考えを見つけよう
考えてみよう!
本当の時刻が10時から10時5分に変わっても、止まった時計が10時のままだったら? さっきの正解だけで、この時計は頼れると言える?
考えるヒントを見る
紙のカードで、本当の時刻だけを書き換えます。「答えが合った」と「時刻を確かめる手がかりが働いた」を分けて、理由を話してみましょう。
参考資料・さらに読む
おうちの方へ:お話のもとになった考え方を調べるための資料です(英語の資料を含みます)。身近な例や「考えてみよう」は、このサイトで作りました。
認識論の問い、偶然の予想と理由の区別、確実性の論点はIEP、止まった時計の反例と三条件の不十分さはSEPを参照しました。青いカードの比較、10時から10時5分への表示、挿絵、図と紙の活動は本サイト独自の架空例・模型です。資料の文章・図版を転載せず、時計の反例を子ども向けの条件にして説明しています。
- Internet Encyclopedia of Philosophy:Epistemology(認識論、正解と理由、止まった時計、知識の議論)
- Stanford Encyclopedia of Philosophy:The Analysis of Knowledge(伝統的な三条件と、偶然が残る反例)
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