昔話の読み比べと、物の役目

シンデレラのくつは、ガラスだけ?

ガラスのくつのはずが、別の本では金のくつ? 二つの英訳を読み比べ、違うところと共通する役目を探してみましょう。

この記事で考えること:本や場面を確かめて、細部の違いと共通する役目を分けて読む。自分の想像は、本文の記述と区別しよう。

「あれ、知っているお話と違う」

マスコットがガラス風と金色のくつの模型を見比べています。二つの本の違いを考える想像図で、実在の品物や原本の挿絵の複製ではありません。
マスコットがガラス風と金色のくつの模型を見比べています。二つの本の違いを考える想像図で、実在の品物や原本の挿絵の複製ではありません。

シンデレラと聞いて、ガラスのくつを思い浮かべる人もいるでしょう。でも、ある本には、金のくつが登場します。どちらかを覚え間違えたのでしょうか。

同じ昔話として親しまれるお話でも、本が違えば、細かな出来事や道具まで同じとは限りません。まず「どの本の、どの場面?」を確かめると、違いを楽しむ入口になります。

今回は、公開されている二つの英語の本を比べます。挿絵のガラス風と金色のくつは、比較するための想像図です。実在のくつや、本に載っている挿絵の複製ではありません。

今回読んだ二つの本では

一つ目は、シャルル・ペローの話を英語で収めた『Tales of Passed Times』のシンデレラです。妖精が主人公を助け、ガラスのくつを用意します。その後、主人公が片方を落とし、くつが持ち主を探す手がかりになります。

二つ目は、グリム兄弟の話の英訳を基にした『Grimms’ Fairy Tales』の「ASHPUTTEL」です。木にいる鳥が主人公を助けます。三日目の宴(うたげ)へ行く場面では、金のくつが登場し、その片方が階段に残ります。

下の図で、今回の本と場面を分けて見ましょう。グリムの話に出てくるくつが、最初から最後まで全部同じ材料だと言っているわけではありません。ここでは、持ち主を探す手がかりになるくつに注目しています。

この比較は、世界中のシンデレラを二種類に分けるものではありません。また、どちらが「一番最初の本物」なのかを決める比較でもありません。実際に確認した二つの本の違いを見ています。

今回の本では、どんなくつ?

ガラス金(三日目)
  1. ペローの話の英訳

    ガラスのくつ。片方を落とし、持ち主を探す手がかりに。

  2. グリムの話の英訳

    三日目の宴では金のくつ。その片方が階段に残る。

左は今回読んだペローの話の英訳。右は今回のグリムの話の英訳で、三日目の宴の場面です。絵は素材の違いを示す想像図です。

くつが変わると、想像も変わる?

マスコットが二種類のくつの絵のカードを並べて考えています。本の記述と自分の想像を分ける、架空の読み比べの場面です。
マスコットが二種類のくつの絵のカードを並べて考えています。本の記述と自分の想像を分ける、架空の読み比べの場面です。

ガラスと聞いて、透き通った光や、こわれそうな感じを思い浮かべるかもしれません。金なら、重みや、きらめく光を思う人もいるでしょう。これは読み手の想像で、みんなが同じように感じるとは限りません。

大切なのは、「本文に書いてあること」と「そこから自分が思い浮かべたこと」を分けることです。たとえば、金のくつと書かれていても、作者が重さを伝えたかったと、すぐに決めることはできません。

二枚目の挿絵では、マスコットがくつの絵のカードを並べています。「透明だから不思議に見える」と思ったなら、どこからそう感じたかを、言葉で説明してみましょう。

違いを見つけたら、すぐに優劣を決めなくてもよいのです。何が違い、その違いによって自分の中の場面がどう変わったかを、まず確かめられます。

違う道具にも、似た役目がある

二つの本で、くつは何をしているでしょう。どちらも、主人公が去った後に片方が残り、持ち主を探す手がかりになります。材料は違っても、物語の中の役目には似たところがあります。

下の図は、ガラスと金のくつを、共通する役目へつないでいます。色や材料のような細部と、出来事の中で果たす役目を、別々に見る図です。

ただし、「くつの役目が似ているから、ほかも全部同じ」とは言えません。主人公を助ける存在や、宴の描かれ方などにも違いがあります。このお話では、くつという一つの道具に問いを絞っています。

違うところだけを並べるのでなく、「ここは似ている。でも、ここは違う」と本文に戻って言えることが、読み比べのおもしろさです。

材料と、物語での役目を分ける

ガラス金持ち主を探す手がかり
  1. 材料は違う

    一方はガラス、もう一方の注目した場面では金。

  2. 物語の中で何が起きる?
    片方が残る

    主人公が去った後、くつが手元から離れて残る。

  3. 何につながる?
    持ち主を探す手がかり

    くつが合う人を探す展開につながる。

今回の二つの本で、くつが果たす共通の役目に注目する整理図。物語のほかの出来事まで同一とする図ではありません。

道具を一つ変えて、短い話を作ろう

今度は本サイトで作った短い話です。「うさぎが赤いリボンを落とした。小鳥が拾って、うさぎに返した。」これを、リボンだけ小さな鈴に変えてみます。

落とす、拾う、返すという出来事は、そのままにします。では、誰の物か気づく場面を足すなら、どんな手がかりがありそうでしょう。リボンの模様を知っている、鈴の音を覚えている、などと想像できます。

これは自分で作る新しい話です。本に書かれていないことを考えてよい活動ですが、それをペローやグリムの本文にあったこととして紹介しないよう、元の話と自分の工夫を分けましょう。

違う本を読んだ友だちと話が合わなくても、すぐに「違うよ」と言う前に、「どの本を読んだ?」と聞いてみませんか。同じ題名の向こうに、もう一つ読む楽しみが見つかるかもしれません。

くらべると、何が見える?

次の表は、この記事のために作った例です。

昔話の読み比べと、物の役目をくらべる
注目することたとえば考える手がかり
本文の違い今回のペローの英訳はガラス、グリムの英訳の三日目は金確認した本と場面を添える。他のすべての本へ広げない。
共通する役目残された片方のくつが、持ち主を探す手がかりになる役目が似ていても、物語の細部がすべて同じとは限らない。
自分の想像透き通る感じ、重そうな感じを思い浮かべる感じたこととして話す。本文の事実や作者の意図と同一にしない。

ことばの小さな辞典

読み比べ
二つ以上の文章を、同じ問いで読んで比べること。
細部(さいぶ)
くつの材料など、話を形づくる細かな部分。
役目(やくめ)
ここでは、その物が出来事の中で何をするか、という働き。

紙とえんぴつで、やってみよう

答えを送信する必要はありません。自分のノートに書いて、おうちの人と話してみてね。

  1. うさぎがリボンを落とし、小鳥が拾って返す短い話を書こう。
  2. リボンだけを鈴へ変え、出来事の流れは同じにしよう。
  3. 持ち主がわかる手がかりを一つずつ考え、自分の工夫とわかる形で加えよう。

じぶんの考えを見つけよう

考えてみよう!

リボンを鈴に変えたら、「持ち主に返す」場面をどう書きたい?

考えるヒントを見る

落とす→拾う→返す、の流れは同じにしよう。持ち主がわかる手がかりや、自分が想像する感じの違いを考えてみて。

参考資料・さらに読む

おうちの方へ:お話のもとになった考え方を調べるための資料です(英語の資料を含みます)。身近な例や「考えてみよう」は、このサイトで作りました。

ガラスのくつ、妖精の援助、落としたくつから持ち主を探す展開は#33511のCinderella、木と鳥の援助、三日目の金のくつ、階段に残るくつと持ち主探しは#2591のASHPUTTEL本文を確認しました。日本語の説明は引用訳ではなく独自の要約です。くつの感じ方、挿絵、関係図、うさぎの短い話と活動は本サイト独自の解釈・架空例です。原本の文章・挿絵を転載していません。

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