丸い点が、文字になる

エレベーターのボタンのそばなどに、小さな盛り上がった点が並んでいることがあります。指で触って読む文字、点字(てんじ)です。点字を使う人は、点の並びを手がかりに読みます。
では、点字の「あ」は、ひらがなの「あ」の線を、小さな点でなぞった形なのでしょうか。実は、そうではありません。字の線の形を写すことと、同じことばを別の仕組みで表すことは違うのです。
この記事では、日本語の一般的な六点の点字を、かなとして読む場合から見ていきます。点字には、かな以外の数字や記号を表す決まりもあります。
挿絵は、マスコットが六つの位置を示す拡大模型を見る、架空の場面です。この模型は位置を確かめるためのもので、一つの単語を表示した看板ではありません。
六つの位置には、名前がある
点字の一つのまとまりを「マス」といいます。一マスには、縦に三つ、横に二列、合わせて六つの点の位置があります。どの点を盛り上げるかで、並びを変えられます。
盛り上がった点を読む側から見ると、左の列は上から1・2・3、右の列は上から4・5・6です。日本点字図書館の説明も、この番号で位置を示しています。下の図で、左右の列を確かめましょう。
ここで大切なのは、点の数だけではなく位置です。かなの「あ」は1の点。「い」は1と2の点です。同じところに点を増やすのではなく、決まった位置を使い分けます。
図の白い丸や番号は、位置を見やすくする補助の印です。本物の点字に、すべての丸い枠や数字が付いているわけではありません。また、これは読む面の図です。点字器で裏から点を打つ時の向きとは分けます。
読む面から、六つの位置を見る
- 縦に三つ、横に二列
六つの位置を合わせて、一マス。
- 読む面から見る
盛り上がった点を読む側。裏から打つ時の向きとは区別する。
「あ」から「か」へ、どこが増えた?

ひらがなの「あ」と「か」の形を見比べても、どこへ点を一つ足せばよいかはわかりません。ところが、日本語の点字には、音の組み合わせと関係する規則があります。
日本点字委員会の解説では、ア行の点に6の点を足すと、カ行になると説明しています。「あ」の1の点に、右下の6の点を足すと「か」。「い」の1・2の点に6を足すと「き」です。
下の図は、二つの組を比べたものです。「あ→か」でも「い→き」でも、増えたのは6の点。もとの並びを残し、共通する場所に点を加えています。字の線をまねるのではなく、音と点の位置の関係が見えてきますね。
ただし、すべての文字をこの足し方だけで作れるわけではありません。例えば、濁る音などを二マスで表す決まりもあります。二枚目の挿絵では、マスコットが紙に練習用の六つの位置を用意しています。
6の点を足すと、カ行になる
- あ → か
1の点に6を加えると、1・6になる。
- い → き
1・2の点に6を加えると、1・2・6になる。
文章も、そのまま置き換えるだけ?
日本点字図書館は、日本語の一般的な点字が、かな・数字・記号などによる仕組みで、ひらがなとカタカナを区別しないことを説明しています。漢字の線を一画ずつ点に置き換える方法ではありません。
文章を書く時には、ことばのまとまりを空白のマスで区切る「分かち書き」も使います。長く続くかなの中で、ことばのまとまりを理解しやすくするための工夫です。
一つの点の並びが、いつでも同じかなを表す、とも限りません。数字を書く時には、数字を示す記号を前に付ける決まりがあります。この記事の「あ」「い」「か」「き」は、かなとして読む時の例なのです。
文字は、形だけの飾りではありません。どちらから読み、何を一まとまりとし、どう区切るか。そうした約束も、読むことを支えます。ここで紹介したのは入口なので、実際の点字を調べる時は、確認できる点字表や解説と一緒に読みましょう。
紙の丸で、位置を比べよう
紙に丸い枠を、縦三つ・横二列で描きます。同じ枠を四組用意し、それぞれの下へ「あ」「か」「い」「き」と書きます。読む面として、左上が1、右下が6になる向きにそろえましょう。
「あ」の紙は1、「か」は1と6、「い」は1と2、「き」は1と2と6の位置をぬります。ぬった丸と、ぬらない枠を区別し、下の図と同じ並びになったか比べます。
次に「あ」と「か」、「い」と「き」を一組ずつ見て、どこが同じで、どこが違うか話してみましょう。紙を裏返したり回したりせず、読む面の向きを同じにして比べます。
これは点の位置の規則を考える、目で見る図の練習です。平らな紙をぬっただけでは、触って読める点字にはなりませんし、点字を使う人の読み方を体験できたことにもなりません。形を写す以外にも、ことばを書き表す仕組みがあると気づく入口にしてみましょう。
くらべると、何が見える?
次の表は、この記事のために作った例です。
| 注目すること | たとえば | 考える手がかり |
|---|---|---|
| かなの線を見る | ひらがなの「あ」と「か」の形を比べる。 | その線を点でなぞる方法ではない。 |
| 点の位置を見る | 「あ」に6の点を足すと「か」になる。 | 同じように「い」に6を足すと「き」になる。 |
| 読み方の決まりを見る | かな、数字など、どんな決まりで読むか確かめる。 | 点の並びだけを切り離して、いつも同じ意味とは決めない。 |
ことばの小さな辞典
- マス
- 点字で、六つの点の位置を一まとまりにした単位。
- 読む面
- 盛り上がった点を読む側の面。図はこの側から示す。
- 分かち書き
- ことばのまとまりを、空白のマスで区切って書くこと。
紙とえんぴつで、やってみよう
答えを送信する必要はありません。自分のノートに書いて、おうちの人と話してみてね。
- 読む面の左右と、六つの位置を確かめる。
- 四つのかなで、盛り上がる点の位置を比べる。
- 点字表や解説で、読み方の決まりも確認する。

じぶんの考えを見つけよう
考えてみよう!
「あ→か」と「い→き」の図を比べよう。二つの組に、同じ場所へ増えた点はある?
考えるヒントを見る
読む面の右下、6の位置を見よう。「あ」は1、「か」は1と6。「い」は1と2、「き」は1と2と6だね。
参考資料・さらに読む
おうちの方へ:お話のもとになった考え方を調べるための資料です(英語の資料を含みます)。身近な例や「考えてみよう」は、このサイトで作りました。
六点の構成と読む面の番号、かなの例は日本点字図書館の教材を参照し、ア行に6を加えるカ行の規則は日本点字委員会の解説とも照合しました。かなの体系と分かち書き、数符の説明も掲載資料に基づきます。挿絵のマスコットや教材模型、紙の練習は本サイト独自の架空の場面です。説明図は読む面から描き直した拡大図で、本物の点字の寸法を再現していません。
内容の誤りや出典についてのご指摘は、訂正窓口へお寄せください。


