ふくろの形をしていないのに?

机に一枚の布と、小さな箱があります。布は平らで、そのままでは箱を入れる場所がありません。でも、箱を置いて布で包み、端を結ぶと、まとまりができます。
あらかじめ袋の形になっていなくても、使う人の動かし方で、物を包む形になるのですね。では、この道具の工夫は、布の中にあるのでしょうか。結び方を知っている人の中にもあるのでしょうか。
挿絵のマスコットは、布で包んだ小さな箱を持っています。本サイトで考えた架空の場面です。実際の古い布を使った実験や、美術館の作業の再現ではありません。
広げた布から、包みになる
物を包んで運ぶ布に、風呂敷(ふろしき)があります。シアトル美術館は、20世紀の日本の風呂敷を収蔵しています。綿の布で、四隅には幾何学的な模様が縫われています。
同館の解説は、向かい合う角を結んで中の物を収め、一枚の布を立体的な形にする使い方を紹介しています。布の材料や模様だけでなく、どこを持ってどう動かすかも、使い方の手がかりになります。
下の図は、新しい布と軽い箱を使う架空の模型です。平らに広げる、包む、結び目をほどいてまた広げる、という形の変化を見てください。実用の結び方を細かく示す手順書ではありません。
使った後にほどいて広げられるなら、次の物を包むことも考えられます。ただし、どんな大きさの布でも、何でも包めるわけではありません。包む物と布が合っているか、という問いが残ります。
広げる、包む、また広げる
- 広げた布
軽い箱を置く前は、平らな一枚の布。
- 角を動かして形を変える布で包む
角を寄せて結ぶと、箱の周りに立体的な形ができる。
- 使った後にほどくほどいて広げる
箱を取り出し、同じ布をまた広げる。
包む布は、ほかにもある

メトロポリタン美術館は、韓国の包む布「ポジャギ」の作例も紹介しています。今回読んだ記録の品は20世紀のもので、絹の布に、色の違う糸などで花や葉の刺繍(ししゅう)が施されています。
刺繍は、布に針と糸で模様などを表す方法です。同館の解説では、物をまとめたり贈り物を包んだりする布に、刺繍や、布片をつなぐ方法などの工夫があると説明されています。
風呂敷の作例と、このポジャギの作例には、「布で包む」という共通点があります。一方で、今回の品の材料や飾り方は同じではありません。似ているところと、それぞれの品で確認できる違いを分けて見られます。
この二つの品だけで、日本や韓国の人が全員同じ布を使う、同じ結び方をする、とは言えません。二枚目の挿絵も、無地の布を広げ直す架空の工作です。所蔵品の模様や作りを再現したものではありません。
物だけでなく、やり方にも目を向ける
布だけを見せてもらった時と、誰かが包むところを見せてくれた時では、わかることが違いそうです。材料や模様に加えて、箱を置く場所、角を動かす順番、ほどき方も見えてきます。
下の図は、包む布を見る三つの問いです。「何を包む?」「どう使う?」「次はどうする?」。物の名前を覚えることに、使う人の動作を調べることを加えています。
たとえば、布が小さすぎたら、別の布や包み方を考えるかもしれません。使った後は、また広げたり、畳んでしまったりできます。これは本サイトで作った、使い方を考えるための例です。
文化を知る手がかりは、昔の形を眺めることだけではありません。人が何をしたくて、その物をどう扱うのかも見ることができます。上手な人に教わるなら、形だけでなく「なぜ、そこを持つの?」と聞く楽しみもあります。
物と、使う動作を一緒に見る
- 何を包む?
箱の大きさや形と、布の大きさが合うか考える。
- 目的から動作へどう使う?
どの角を持ち、どこへ動かすのかを見る。
- 使った後も考える次はどうする?
ほどく、広げる、畳む。使った後の動作も見る。
机の上で、包んで、広げてみよう
使ってよい新しいハンカチや小さな布と、軽い空き箱を用意します。布を机に広げ、中央に箱を置きます。持ち主の許可がある布を使い、美術品や大切な古い布は使いません。
まず、布の向かい合う二つの角を、箱の上へ近づけてみましょう。届かなければ、もっと小さい箱に替えます。次に、残りの角も寄せて、平らだった布が箱に沿って変わるところを見ます。
今回は持ち上げず、机の上で形を比べる活動です。角を戻して布を広げ、箱を取り出します。結び方も試したい時は、知っている大人に見せてもらい、どこをどう動かしたかを話してみましょう。
最初と最後の布は同じでも、使っている途中の形は違います。身近な道具を見たら、「これは何?」に「人はこれをどう使う?」を足してみませんか。物と人の知恵がつながるところが、見つかるかもしれません。
くらべると、何が見える?
次の表は、この記事のために作った例です。
| 注目すること | たとえば | 考える手がかり |
|---|---|---|
| 物を見る | 布の材料、大きさ、模様を確かめる | 名前が同じでも、すべて同じ作りとは限らない。 |
| やり方を見る | どの角を、どこへ動かすかを見る | 布そのものを見るだけでは、動作の順番まではわからない。 |
| 使った後を見る | ほどき、広げて、また使うことを考える | 今回の模型の話。何でも同じ布で包めるとは限らない。 |
ことばの小さな辞典
- 風呂敷(ふろしき)
- 物を包んだり、運んだりするための布。
- 立体(りったい)
- 平らな面だけでなく、奥行きや厚みもある形。
- 刺繍(ししゅう)
- 布に針と糸で模様などを表すこと。
紙とえんぴつで、やってみよう
答えを送信する必要はありません。自分のノートに書いて、おうちの人と話してみてね。
- 使ってよい新しい布を机に広げ、軽い空き箱を中央へ置こう。
- 向かい合う角、残りの角を順に箱へ寄せて、形の変化を見よう。持ち上げません。
- 布を戻して箱を出し、最初と最後で何が同じか話そう。

じぶんの考えを見つけよう
考えてみよう!
平らな布を箱の周りに寄せると、何が変わり、何が同じまま?
考えるヒントを見る
布の形、角の位置、布そのものを分けて見よう。箱を取り出して広げた後にも比べてみて。今回は机の上で行い、持ち上げません。
参考資料・さらに読む
おうちの方へ:お話のもとになった考え方を調べるための資料です(英語の資料を含みます)。身近な例や「考えてみよう」は、このサイトで作りました。
風呂敷の用途、向かい合う角を結んで立体的な包みにする説明、綿と四隅の模様はSAMの89.153の解説・資料情報を確認しました。ポジャギの作例の年代・素材・花と葉の刺繍、包む用途と複数の装飾方法はMetの2024.301.17の解説・資料情報に基づきます。Metの英語作品名は公開記録の表記に従っています。挿絵・形の循環図・三つの問い・机上活動は本サイト独自の架空例で、原文や所蔵品の画像は転載していません。
- Seattle Art Museum「Wrapping cloth (furoshiki)」20世紀・所蔵番号89.153
- The Metropolitan Museum of Art「Wapping cloth with embroidery」韓国・20世紀・所蔵番号2024.301.17
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