博物館の展示と、見えないところの仕事

博物館は、なぜ全部を見せないの?

展示室にない物は、大切ではないの? 小さな博物館づくりから、物を見せること、守ること、調べることの関係を考えます。

この記事で考えること:展示室にない物にも、守り、記録し、調べる仕事がある。見せることと、未来へ残すことを一緒に考えよう。

棚の奥には、何がある?

マスコットが小さな博物館で、工作の船を見せる机と、工作をしまう棚を見くらべています。本サイト独自の架空の場面です。
マスコットが小さな博物館で、工作の船を見せる机と、工作をしまう棚を見くらべています。本サイト独自の架空の場面です。

家で「小さな博物館」を作ることにしました。自分で描いた絵、紙で作った帽子、工作の船。どれにも、作ったときの思い出があります。ところが、見せる机には全部が並びません。

とりあえず絵と船を出して、帽子は箱にしまいました。「帽子は、いらないの?」と聞かれたら、どう答えますか。机にないことと、大切ではないことは、同じなのでしょうか。

挿絵のマスコットも、見せる場所と、しまう場所を見くらべています。この博物館と工作は、本サイトで考えた架空の例です。本物の博物館にも、展示室のほかに物を保管する場所があります。

「見せる」と「守る」を、一緒に考える

博物館が集めて管理している物を「収蔵品(しゅうぞうひん)」と呼びます。しまっている物も含む言い方です。展示されているかどうかだけでは、その物の役割は決まりません。

たとえば、さっきの紙の帽子を、重い工作の下へ押しこめたらどうなるでしょう。場所に入ればよい、とは言えません。大きさ、重さ、材料、こわれやすさも考えたいですね。下の図で、見せる場所と保管する場所の目的をくらべてみましょう。

実際に、イギリスのヴィクトリア&アルバート博物館(V&A)の保管施設「イースト・ストアハウス」は、物の大きさ、重さ、材料、こわれやすさに応じて保管すると説明しています。これは、その施設の説明です。どの博物館でも、同じ場所や道具を使うわけではありません。

どちらも、大切な工作のための場所

船と、伝えるための説明
帽子を守る箱と、探すための記録
  1. 展示:伝える

    工作の船を、説明と一緒に見せる。見やすさだけでなく、状態も気にかける。

  2. 保管:次につなぐ

    紙の帽子をつぶれにくい所へ置く。どこにあるかを記録し、状態を確かめる。

家の小さな博物館を想定した模式図です。展示と保管の役割は重なることもあり、本物の施設の構造を示してはいません。

しまった後にも、仕事がある

マスコットが、紙の帽子をしまう箱のそばで、工作の記録を確かめています。実物の保管庫を再現したものではない、架空の場面です。
マスコットが、紙の帽子をしまう箱のそばで、工作の記録を確かめています。実物の保管庫を再現したものではない、架空の場面です。

帽子を箱に入れて、ふたを閉めました。でも、どの箱に何があるか忘れたら、次に見せたいときに探せません。「どこにあるか」の記録も必要になります。

この施設の担当者は、収蔵品を守るほか、写真を撮る、記録する、動かす、展示に取り付けるといった仕事を紹介しています。展示ができあがるまでには、見えにくいところの仕事もあるのです。

しまうことは、それだけで十分な保護になるわけではありません。材料に合う保管のしかたや、必要な手入れを考えます。挿絵は、マスコットが工作のそばで記録を確かめる、架空の場面です。実物の保管庫や作業手順を再現したものではありません。

展示室の外でも、出会える?

「見られないのなら、しまったままでいいの?」。守る理由があっても、見たい人の問いは残ります。物を傷めにくくすることと、人が調べたり楽しんだりできること。その両方を考える必要があります。

V&Aでは、オンラインの資料検索で、展示中の物と、予約して見られる物を分けて探せます。また、イースト・ストアハウスは、働いている保管施設の内側を来館者が見られるようにしています。保管する場所を開く方法もあるのですね。

ただし、どの物にも自由に触れられる、いつでも全部を見られる、という意味ではありません。施設ごとの案内や条件を確かめます。画面の写真で知れることと、実物の大きさや材料から知れることも、同じではありません。

下の図では、「見たい」と思ってから、出会い方を確かめるまでをたどります。一つの方法で見られなかったとき、別の入り口があるかを探してみましょう。

「見たい」から、出会い方を探す

  1. 知りたいことを決める

    形? 材料? 作った人や時代?

  2. 問いを持って探す
    案内を調べる

    展示の情報、資料検索、閲覧の制度を確かめる。

  3. できること・できないことを確かめる
    条件に合う方法を選ぶ

    記録を見る、訪ねる、問い合わせる。予約や触れる条件は施設の案内に従う。

調べ方の例です。写真も予約閲覧も、すべての物に用意されているとは限りません。

あなたの小さな博物館なら?

自分の工作を3つ思い浮かべ、今日は1つだけ見せるとします。残り2つは、どこで、どんなふうに保管しますか。次に出すため、何を記録しておきたいですか。

見せる1つには、「何を伝えたいか」を短く書きます。ほかの2つも、名前や作った日、置いた場所を紙に残してみましょう。物を出す順番を変えれば、別のお話を紹介できるかもしれません。

博物館を訪ねたら、「今日は何を見せている?」「展示室の外には、どんな仕事がある?」と問いを広げられます。見える物を楽しみながら、まだ見えていない物へ関心を向けることも、博物館の歩き方の一つです。

くらべると、何が見える?

次の表は、この記事のために作った例です。

博物館の展示と、見えないところの仕事をくらべる
注目することたとえば考える手がかり
展示する場所工作の船を、説明と一緒に見せる見たい人に伝える。置く場所や物の状態も考えたい。
保管する場所紙の帽子をつぶれにくい所へ置き、場所を記録するまた使うために守る。しまうだけで安心とは限らない。
別の出会い方記録や写真を見る、閲覧の案内を調べる実物の展示以外にも入り口がある。ただし条件は施設ごとに違う。

ことばの小さな辞典

収蔵品(しゅうぞうひん)
博物館などが集めて管理する物。展示している物も、保管している物も含みます。
展示(てんじ)
物などを、人が見られるように並べて伝えること。
保管(ほかん)
物を管理しながら置いておくこと。物に合う場所や扱い方を考えます。

紙とえんぴつで、やってみよう

答えを送信する必要はありません。自分のノートに書いて、おうちの人と話してみてね。

  1. 自分の工作を3つ選ぶか、紙に3つ描こう。借りた物や大切な古い物は使いません。
  2. 今日は1つだけ見せ、伝えたいことを短く書こう。
  3. 残り2つの置き場所と、次に探すための記録を考えよう。

じぶんの考えを見つけよう

考えてみよう!

自分の工作を3つ持つ博物館で、今日は1つだけ見せます。残り2つも大切にするため、何をしておく?

考えるヒントを見る

どこに何を置いたかを記録する、重い物を上にのせない場所を考える、次に見せたいテーマをメモする。見せる1つだけでなく、しまう2つにも役割を考えてみましょう。実際の博物館では、勝手に物を動かしたり触ったりせず、案内に従います。

参考資料・さらに読む

おうちの方へ:お話のもとになった考え方を調べるための資料です(英語の資料を含みます)。身近な例や「考えてみよう」は、このサイトで作りました。

材料などに応じた保管はHow Storehouse operates、撮影・記録などの仕事はActivity at Storehouse、展示中と予約閲覧の検索はExplore the Collections、保管施設を開く実例はAbout V&A East Storehouseを参照しました。家の博物館、工作、挿絵、図、活動は本サイト独自の架空例です。実際の収蔵品や施設の写真は転載していません。

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