絵の外側にも、目を向けよう

小さな花の絵を描きました。茶色い紙の枠と、金色の紙の枠を、順番に周りへ置いてみます。絵には手を加えていないのに、違う感じがするでしょうか。
絵の周りを囲む枠を「額ぶち(がくぶち)」と呼びます。挿絵のマスコットも、絵のそばで額ぶちを選んでいます。この絵や額ぶち、場面は、本サイトで作った架空の例です。
花だけを見ていた目が、枠の色や飾りにも向きます。絵と額ぶちを合わせた姿を、私たちは見ているのですね。外に付いているなら、作品とは関係ないのでしょうか。
同じ絵で、周りだけを変える
下の図は、まったく同じ花の絵を、同じ大きさで置いた比較です。変えたのは、周りの額ぶちの色と飾り。まず絵の中を、次に周りを見てください。
茶色の細い枠では、花に目が向く人もいるでしょう。金色の飾りのある枠では、枠のほうが先に気になる人もいるかもしれません。全員が同じ感じ方をするという決まりではありません。
「金色なら高級」「細い枠なら正解」と順位を付けるより、どこを見たか、どんな線や色が気になったかを話してみましょう。ナショナル・ギャラリーも、額ぶちが絵の受け取り方に関わることを説明しています。
絵は同じ。周りの額ぶちだけを変える
- A:茶色の細い額
どこへ先に目が向く? 花と周りを順番に見てみよう。
- B:金色の飾りのある額
Aと見くらべて、気になった色や形を言葉にしよう。
今の額ぶちは、だれが選んだ?

美術館で見ている額ぶちが、必ず絵の作者の選んだものとは限りません。ナショナル・ギャラリーの解説によると、同館で最初の額ぶちを保っている絵は、ごく少数です。
同館では、可能なときに絵の時代に合う額を用意する一方、後の時代に付けられた大切な額を、絵の歴史として残すこともあると説明しています。昔の姿に近づけたい理由も、後から重なった歴史を残したい理由もあるのですね。
具体例として、レオナルド・ダ・ヴィンチの『岩窟の聖母』は、同館で2010年に新しい額とともに展示へ戻りました。その額には16世紀初めの額の一部が使われ、不足する部分が別の作例を参考に作られました。絵が生まれたときの額が、そっくり残っていたという意味ではありません。
挿絵は、マスコットが額の飾りを調べる架空の場面です。実際の作品や、その額ぶちを再現したものではありません。
絵が入っていなくても、作品?
額ぶちの葉っぱのような彫りや、角の飾りをよく見てみましょう。絵の脇役と思っていたものにも、形を考え、材料を加工した人の仕事が見えてきます。
ヴィクトリア&アルバート博物館(V&A)は、彫りや装飾のよさに注目して、絵の入っていない額ぶちも独立した物として集めてきたと紹介しています。額だけを見て、工夫を楽しむこともできるのです。
下の図では、「絵との組み合わせ」「額そのもの」「選ばれてきた歴史」という三つの問いを分けています。額は絵の一部なのか、という問いも、何を一緒に考えたいかで答え方が変わります。取り外せることと、見え方に関係しないことは、同じではありません。
「絵の一部?」を、三つの問いに分ける
- 組み合わせ
この絵と並ぶと、どこが気になる?
- 額そのもの
彫りや飾りに、どんな工夫がある?
- 歴史
いつ、だれが、なぜこの額を選んだ?
あなたなら、何を見せたい?
自分で描いた小さな絵の周りに、細い紙の帯を並べて、額ぶちの代わりにしてみましょう。絵の大きさ、置く場所、明るさは同じにして、まず帯の色だけを変えます。
次に、帯の太さや飾りを変えます。一度に全部変えると、何が気になったのか比べにくくなるので、一つずつ試してみましょう。「花を見てほしい」「周りも楽しくしたい」。見せたいことを言葉にすると、枠を選ぶ理由も探せます。
額ぶちを付けない表し方もあります。どの絵にも同じ枠が必要、という答えにはしません。美術館を歩くときは、絵の外側へも少し目を広げて、どんな組み合わせで見せているかを楽しんでみませんか。
くらべると、何が見える?
次の表は、この記事のために作った例です。
| 注目すること | たとえば | 考える手がかり |
|---|---|---|
| 絵と合わせて見る | 花と枠の色・形をくらべる | 同じ絵でも、周りが気になることがある。感じ方は決めつけない。 |
| 額そのものを見る | 角の飾りや、彫られた模様を見る | 額を作った人の工夫にも目を向ける。 |
| 歴史を調べる | いつ、だれが、この額を選んだ? | 絵と額が同時に作られたとは限らない。見ただけで作者の意図を決めない。 |
ことばの小さな辞典
- 額ぶち(がくぶち)
- 絵などの周りを囲む枠。形や色、飾りも見る手がかりになります。
- 装飾(そうしょく)
- 形や模様などを加えて飾ること。
- 作例(さくれい)
- 実際に作られた物の例。形や作り方を調べる手がかりになります。
紙とえんぴつで、やってみよう
答えを送信する必要はありません。自分のノートに書いて、おうちの人と話してみてね。
- 自分で小さな花の絵を描き、机に置こう。
- 紙の帯を周りに並べ、色だけを変えてくらべよう。絵の大きさと置く場所は同じにします。
- 次に太さや飾りを変え、どこに目が向いたか、理由を話そう。

じぶんの考えを見つけよう
考えてみよう!
花を見てほしい絵と、周りの飾りも楽しんでほしい絵。同じ花の絵に、どんな紙の枠を合わせる? その理由は?
考えるヒントを見る
色、太さ、飾りを一つずつ変え、最初に目が向く場所を話してみましょう。同じ感じ方にならなくても大丈夫。実際の作品の額は外さず、自分の絵と紙の帯で試します。
参考資料・さらに読む
おうちの方へ:お話のもとになった考え方を調べるための資料です(英語の資料を含みます)。身近な例や「考えてみよう」は、このサイトで作りました。
額が見え方に関わること、当初の額の少なさ、後世の額を残す考え方はNational GalleryのFrames、古い部材と補作を組み合わせた2010年の例は同館のFrame in focus、空の額を集める説明はV&AのFramesを参照しました。花の絵、比較の印象、挿絵と図、活動は本サイト独自の架空例です。実作品・実物の額の画像は転載していません。
- National Gallery: Frames(額と絵の見え方、当初の額と後世の額)
- National Gallery: Frame in focus: Leonardo’s Virgin of the Rocks(2010年の額の制作事例)
- V&A: Frames(空の額ぶちを独立した物として集めること)
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