描いた形と余白、画面の組み立て

絵の空白は、ただの余り?

丸を一つ描いただけの紙。空いている場所も、絵に関係するのかな? 同じ形を動かしたり、周りをぬったりして、余白を見る目を育てます。

この記事で考えること:描いた形と、その周りの空間を一緒に見よう。余白にも広さや形があり、画面を作る手がかりになる。

丸が一つ。まだ描き足さないとだめ?

マスコットが、同じ青い丸の位置を変えた二枚の紙を見比べています。絵の中の空きを考える、本サイト独自の工作の場面です。
マスコットが、同じ青い丸の位置を変えた二枚の紙を見比べています。絵の中の空きを考える、本サイト独自の工作の場面です。

白い紙に、青い丸を一つ描きました。「ほかが空いているから、もっと描こうかな」。そう思ったら、描き足す前に、丸の周りを眺めてみましょう。

空いたところを「余白(よはく)」と呼ぶことがあります。余白にも、広さや形があります。紙の中に何を置くかと同じように、どこを空けるかも、画面を作る工夫になるのです。

挿絵は、マスコットが小さな丸の絵を並べる、架空の工作の場面です。今回は本サイトで作った丸や葉の形を使い、「何も描かない場所」をよく見てみます。

丸は同じでも、空き方が変わる

下の図では、同じ大きさの紙に、同じ青い丸を一つ置きました。左の絵では丸が中央、右の絵では丸が右寄りにあります。丸の色・大きさと、紙の大きさは同じです。

変わったのは置く場所です。右寄りにすると、丸の左側が広く空き、右側は狭くなります。丸を大きくしていないので、空いた部分の面積の合計は変わりません。でも、その形や分かれ方は変わっています。

中央の丸から見始める人もいれば、広く空いた側が気になる人もいるでしょう。「どちらが落ち着く?」の答えをそろえるより、「どこが、どれくらい空いている?」と指さして比べてみましょう。

ゲティ美術館の教材は、主な物が占める部分と、その周りの空間を分けて説明しています。周りの空間は「ネガティブ・スペース」とも呼ばれます。「よくない空間」という意味ではありません。

丸は同じ。空き方はどう?

A:中央B:右寄り
  1. A:中央に置く

    丸の左側と右側に、同じ幅の空きがある。

  2. B:右寄りに置く

    左側の空きが広くなり、右側は狭くなる。

紙・丸の大きさと色は同じ。丸をはみ出さずに動かすので、空いた面積の合計は同じです。左右の空きの形と広がりを比べましょう。

ぬらない紙が、光を表すことも

マスコットが、葉を白く残して周りをぬった紙を見ています。余白と形を考える架空の工作で、実在の美術作品の再現ではありません。
マスコットが、葉を白く残して周りをぬった紙を見ています。余白と形を考える架空の工作で、実在の美術作品の再現ではありません。

実際の作品について、美術館はどんな見方をしているでしょう。ゲティの担当者ステファニー・シュレーダーは、2013年の解説で、描き込まれていない紙にも注目するよう案内しています。

その中で、ニコラ・プッサンの『森の開けた場所へ続く道』(英語の作品名は A Path Leading into a Forest Clearing)を取り上げています。担当者は、森の中のほとんど描かれていない紙の部分を、差し込む日の光として読んでいます。

白い紙は、何かが足りない場所とだけ見る必要はないのですね。ただし、白いところがあれば何でも光、という決まりではありません。周りに何が描かれ、どう組み合わされているかが手がかりになります。

二枚目の挿絵は、マスコットが葉の周りをぬった紙を見る工作の場面です。プッサンの作品を再現した絵ではありません。今度は、自分で作れる簡単な形で、周りを見る練習をしましょう。

葉をぬる? 葉の周りをぬる?

同じ葉の輪郭を、二つの四角い画面に用意したとします。一つは葉の内側だけをぬります。もう一つは葉を白く残し、周りだけをぬります。下の図で、葉と周りの両方を見てください。

二つ目の葉には色を置いていません。それでも、周りをぬった境目から、葉の形を見つけられます。「形を見せるには、その中を全部ぬらなければいけない」とは限らないのです。

ここでいう余白は、画面を考えるための見方です。白い色を使ったところが全部同じ役目とは限りませんし、周りの空間が色でぬられている場合もあります。紙の白さだけで分類しないで、何と何の関係を見ているかを確かめましょう。

また、空きがあるだけで「作者はさびしさを表したかった」とは決められません。自分がそう感じたことと、作者の考えがわかったことは別です。余白を多くするほどよい、という順位を付ける必要もありません。

どちらにも、葉の形がある

A:内側をぬるB:周りをぬる
  1. A:内側をぬる

    葉そのものに色を置いて、形を見せる。

  2. B:周りをぬる

    葉は白く残す。周りとの境目が形の手がかりになる。

同じ葉の輪郭を使った本サイト独自の練習図です。内側をぬる方法と、周りをぬって葉を白く残す方法を比べます。

貼る前に動かして、空いた形を探そう

同じ紙と、小さな丸い紙を一つ用意します。丸い紙はシールや、用意してもらった紙片でもかまいません。まず中央、次に右寄りへ置き、まだ貼らずに比べてみましょう。

丸の色や大きさを変えず、紙からはみ出さないようにします。丸の周りを指でゆっくりたどると、どこが広く、どこが狭くなったかわかりやすくなります。紙を動かしただけなので、失敗しても何度も戻せます。

見つけたことを「左側が広く空いた」のように話します。その後で、「向こうへ進めそうに感じた」など、自分の感じ方を添えてもよいでしょう。見える配置と、自分の想像を分ける練習です。

絵を見た時、描かれた物を一つ探したら、その周りの空いた形も一つ探してみませんか。何を描くかに、どこを描かずにおくかという問いが加わると、画面の楽しみ方が広がります。

くらべると、何が見える?

次の表は、この記事のために作った例です。

描いた形と余白、画面の組み立てをくらべる
注目することたとえば考える手がかり
同じにしたもの紙と丸の大きさ、丸の色丸を動かす前後で、条件をそろえて比べる。
見える変化右寄りにすると左側が広く空く空いた面積の合計ではなく、空きの形や配置が変わる。
自分の感じ方広々と見える、端が気になるどこを見てそう感じたか話す。全員の答えを同じにしない。

ことばの小さな辞典

余白(よはく)
ここでは、絵の中で描き込まずに空けた部分。広さや形にも目を向けます。
構図(こうず)
画面の中で、形や空間をどう組み立てるかということ。
ネガティブ・スペース
主な物の周りの空間を指す美術の言い方。悪い空間という意味ではありません。

紙とえんぴつで、やってみよう

答えを送信する必要はありません。自分のノートに書いて、おうちの人と話してみてね。

  1. 同じ紙と、小さな丸い紙を一つ用意しよう。
  2. 丸を中央から右寄りへ動かし、はみ出さない位置で比べよう。
  3. 周りを指でたどって、空いた形の違いと、自分の感じ方を分けて話そう。

じぶんの考えを見つけよう

考えてみよう!

同じ丸を中央から右へ動かしたら、丸の周りはどんな形に変わる?

考えるヒントを見る

丸と紙の大きさは同じにしてね。左側と右側の空きを順番に見よう。「見える配置」と「そう感じたこと」を分けて話してみて。

参考資料・さらに読む

おうちの方へ:お話のもとになった考え方を調べるための資料です(英語の資料を含みます)。身近な例や「考えてみよう」は、このサイトで作りました。

主な物と周りの空間の区別、画面内の空間を見る視点はゲティのSpace節を参照しました。プッサン作品の描き込まれていない紙を光と読む説明は、シュレーダー本人による2013年の解説を確認して要約しています。日本語の作品名は内容を伝えるための訳で、原文引用や作品画像の転載はしていません。丸・葉・挿絵・図・工作活動は本サイト独自の架空例です。丸の移動で空いた面積が変わらない点は、この図の条件から確かめられる関係で、美術館の実験結果ではありません。

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