丸が一つ。まだ描き足さないとだめ?

白い紙に、青い丸を一つ描きました。「ほかが空いているから、もっと描こうかな」。そう思ったら、描き足す前に、丸の周りを眺めてみましょう。
空いたところを「余白(よはく)」と呼ぶことがあります。余白にも、広さや形があります。紙の中に何を置くかと同じように、どこを空けるかも、画面を作る工夫になるのです。
挿絵は、マスコットが小さな丸の絵を並べる、架空の工作の場面です。今回は本サイトで作った丸や葉の形を使い、「何も描かない場所」をよく見てみます。
丸は同じでも、空き方が変わる
下の図では、同じ大きさの紙に、同じ青い丸を一つ置きました。左の絵では丸が中央、右の絵では丸が右寄りにあります。丸の色・大きさと、紙の大きさは同じです。
変わったのは置く場所です。右寄りにすると、丸の左側が広く空き、右側は狭くなります。丸を大きくしていないので、空いた部分の面積の合計は変わりません。でも、その形や分かれ方は変わっています。
中央の丸から見始める人もいれば、広く空いた側が気になる人もいるでしょう。「どちらが落ち着く?」の答えをそろえるより、「どこが、どれくらい空いている?」と指さして比べてみましょう。
ゲティ美術館の教材は、主な物が占める部分と、その周りの空間を分けて説明しています。周りの空間は「ネガティブ・スペース」とも呼ばれます。「よくない空間」という意味ではありません。
丸は同じ。空き方はどう?
- A:中央に置く
丸の左側と右側に、同じ幅の空きがある。
- B:右寄りに置く
左側の空きが広くなり、右側は狭くなる。
ぬらない紙が、光を表すことも

実際の作品について、美術館はどんな見方をしているでしょう。ゲティの担当者ステファニー・シュレーダーは、2013年の解説で、描き込まれていない紙にも注目するよう案内しています。
その中で、ニコラ・プッサンの『森の開けた場所へ続く道』(英語の作品名は A Path Leading into a Forest Clearing)を取り上げています。担当者は、森の中のほとんど描かれていない紙の部分を、差し込む日の光として読んでいます。
白い紙は、何かが足りない場所とだけ見る必要はないのですね。ただし、白いところがあれば何でも光、という決まりではありません。周りに何が描かれ、どう組み合わされているかが手がかりになります。
二枚目の挿絵は、マスコットが葉の周りをぬった紙を見る工作の場面です。プッサンの作品を再現した絵ではありません。今度は、自分で作れる簡単な形で、周りを見る練習をしましょう。
葉をぬる? 葉の周りをぬる?
同じ葉の輪郭を、二つの四角い画面に用意したとします。一つは葉の内側だけをぬります。もう一つは葉を白く残し、周りだけをぬります。下の図で、葉と周りの両方を見てください。
二つ目の葉には色を置いていません。それでも、周りをぬった境目から、葉の形を見つけられます。「形を見せるには、その中を全部ぬらなければいけない」とは限らないのです。
ここでいう余白は、画面を考えるための見方です。白い色を使ったところが全部同じ役目とは限りませんし、周りの空間が色でぬられている場合もあります。紙の白さだけで分類しないで、何と何の関係を見ているかを確かめましょう。
また、空きがあるだけで「作者はさびしさを表したかった」とは決められません。自分がそう感じたことと、作者の考えがわかったことは別です。余白を多くするほどよい、という順位を付ける必要もありません。
どちらにも、葉の形がある
- A:内側をぬる
葉そのものに色を置いて、形を見せる。
- B:周りをぬる
葉は白く残す。周りとの境目が形の手がかりになる。
貼る前に動かして、空いた形を探そう
同じ紙と、小さな丸い紙を一つ用意します。丸い紙はシールや、用意してもらった紙片でもかまいません。まず中央、次に右寄りへ置き、まだ貼らずに比べてみましょう。
丸の色や大きさを変えず、紙からはみ出さないようにします。丸の周りを指でゆっくりたどると、どこが広く、どこが狭くなったかわかりやすくなります。紙を動かしただけなので、失敗しても何度も戻せます。
見つけたことを「左側が広く空いた」のように話します。その後で、「向こうへ進めそうに感じた」など、自分の感じ方を添えてもよいでしょう。見える配置と、自分の想像を分ける練習です。
絵を見た時、描かれた物を一つ探したら、その周りの空いた形も一つ探してみませんか。何を描くかに、どこを描かずにおくかという問いが加わると、画面の楽しみ方が広がります。
くらべると、何が見える?
次の表は、この記事のために作った例です。
| 注目すること | たとえば | 考える手がかり |
|---|---|---|
| 同じにしたもの | 紙と丸の大きさ、丸の色 | 丸を動かす前後で、条件をそろえて比べる。 |
| 見える変化 | 右寄りにすると左側が広く空く | 空いた面積の合計ではなく、空きの形や配置が変わる。 |
| 自分の感じ方 | 広々と見える、端が気になる | どこを見てそう感じたか話す。全員の答えを同じにしない。 |
ことばの小さな辞典
- 余白(よはく)
- ここでは、絵の中で描き込まずに空けた部分。広さや形にも目を向けます。
- 構図(こうず)
- 画面の中で、形や空間をどう組み立てるかということ。
- ネガティブ・スペース
- 主な物の周りの空間を指す美術の言い方。悪い空間という意味ではありません。
紙とえんぴつで、やってみよう
答えを送信する必要はありません。自分のノートに書いて、おうちの人と話してみてね。
- 同じ紙と、小さな丸い紙を一つ用意しよう。
- 丸を中央から右寄りへ動かし、はみ出さない位置で比べよう。
- 周りを指でたどって、空いた形の違いと、自分の感じ方を分けて話そう。

じぶんの考えを見つけよう
考えてみよう!
同じ丸を中央から右へ動かしたら、丸の周りはどんな形に変わる?
考えるヒントを見る
丸と紙の大きさは同じにしてね。左側と右側の空きを順番に見よう。「見える配置」と「そう感じたこと」を分けて話してみて。
参考資料・さらに読む
おうちの方へ:お話のもとになった考え方を調べるための資料です(英語の資料を含みます)。身近な例や「考えてみよう」は、このサイトで作りました。
主な物と周りの空間の区別、画面内の空間を見る視点はゲティのSpace節を参照しました。プッサン作品の描き込まれていない紙を光と読む説明は、シュレーダー本人による2013年の解説を確認して要約しています。日本語の作品名は内容を伝えるための訳で、原文引用や作品画像の転載はしていません。丸・葉・挿絵・図・工作活動は本サイト独自の架空例です。丸の移動で空いた面積が変わらない点は、この図の条件から確かめられる関係で、美術館の実験結果ではありません。
- J. Paul Getty Museum「Understanding Formal Analysis — Elements of Art」Space節
- Stephanie Schrader「Getty Voices: The Poetry of Paper」(2013年7月22日)
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